マイナス金利が住宅ローン金利に与える影響
カテゴリー:金利
最終更新日:2016年9月9日

2016年2月16日から、日銀によるマイナス金利政策がついに開始されました。このところ新聞、テレビ、雑誌など、さまざまなメディアでマイナス金利が取り上げられていますので、ご存知の人も多いのではないでしょうか。
このページでは、「マイナス金利とは?」、「なぜ住宅ローンに影響を与えるのか?」というところを、なるべく簡単に、わかりやすくご紹介します。少し長くなりますが、これから住宅ローンを組もうとしている人にとっては、重要な内容になりますので、最後までご覧ください。
1.そもそも、マイナス金利とは?
まずは、マイナス金利についてご説明したいと思います。通常なら銀行にお金を預けると金利を受け取ることができますが、マイナス金利ではこれが逆になり、お金を預けると金利を支払うことになります。こう聞くと、「私達が利用している銀行預金の金利がマイナスになるの?!」と思われるかもしれませんが、現状では銀行預金の金利がマイナスになるわけではありません。

上の画像をご確認ください。銀行などの金融機関は、日銀に「日銀当座預金 ※1」と呼ばれる決済用の口座を持っています。これまでは、この日銀当座預金にお金を預けておくと年0.1%の金利を受け取ることができました。例えば1000億円預ければ、1年で1億円が金利としてもらえていたのです。
※1 日銀当座預金…銀行などの金融機関が、他の金融機関や日本銀行、あるいは国と取引を行う際の決済手段などに使用するための資金を入れておくための口座

しかし、マイナス金利導入後は日銀当座預金の一部に-0.1%の金利がつくことになりました。先ほどとは逆に、日銀に対して年0.1%の金利を支払わなければならくなります。つまり、1000億円預ければ、1億円の金利を日銀に支払わなければなりません。これがマイナス金利のおおまかな仕組みです。
2.なぜマイナス金利を導入したのか?
日銀は、なぜこのような仕組みを導入したのでしょうか?簡単にご説明すると経済を活性化させることが目的です。銀行などの金融機関は、日銀にお金を預けたままでは、-0.1%の金利を支払わなくてはなりません。日銀に預けて損をするくらいなら、「企業へ貸し出したり、投資にまわそう!」、という動きになることを狙っています。眠っているお金を世の中にまわして経済をさらに活性化させるために導入されたというわけです。

3.なぜ住宅ローンに影響があるのか?
マイナス金利の仕組みと、導入した理由については、なんとなく理解していただけましたしょうか?問題なのは、なぜ住宅ローンの金利が下がると言われているのかですよね。その理由を理解するには、住宅ローン金利の決まり方を理解していないといけないのですが、住宅ローン金利の決まり方は複雑でややこしいので、このページでは重要なポイントのみ簡単にお伝えします。

住宅ローンには、変動金利と、固定金利の2種類があるのはご存知だと思いますが、変動金利は、日本銀行が銀行に融資する際の金利である、「政策金利と連動して金利が変動」し、固定金利は、日本国債の中で、最も市場規模の大きい「10年物国債の利回りと連動して金利が変動」します。「変動金利=政策金利」、「固定金利=10年物国債の利回り」ということだけ理解しておいてください。今回のマイナス金利では、固定金利が10年物国債の利回りと連動しているということがポイントになります。
国債は日本国が発行している、国が利子と元本を保証してくれる債券のことです。先ほど「銀行などの金融機関は、日銀に預けたままだと損をするので、企業へ貸し出したり、投資にまわす動きになる。」と説明しましたが、銀行からすると、どんな企業でもかまわずお金を融資するというわけにはいかないので、まずは、利回りが低くても元本が保証されている国債に投資しようという動きが出てきます。さて、国債に投資する銀行が増えると一体どうなるのでしょうか。下の表をご覧ください。
国債の購入者が増える | 国債の購入者が減る |
---|---|
国債の価格が上がる↑ | 国債の価格が下がる↓ |
利回りが下がる↓ | 利回りが上がる↑ |
つまり、国債が人気になる(大量に買われる) → 国債の取引金額が上がる → 利回りが下がる → 国債の利回りと固定金利は連動しているので、住宅ローンの金利も合わせて下がる。ということになります。実際に、2016年2月22日の時点で、10年物国債の利回りは、一時-0.005%まで下がっています。ちなみに、今回のマイナス金利で、変動金利と連動している政策金利に変化はありませんが、今後もマイナス金利が続く場合、変動金利も影響をうける可能性が高いと思います。
4.住宅ローンの金利は下がるのか?
結論から言うとある程度は下がりそうですが、大きな引き下げは見込めないと思います。現在住宅ローンの金利は、過去30年間の推移を見ても最低水準です。すでに過去最低レベルに低い金利なので、住宅ローンが大きな収入源である銀行にとって、金利はなるべく高めに維持したいというのが本音ではないでしょうか。

出典:住宅金融支援機構「民間金融機関の住宅ローン金利推移(変動金利等)」
大きな金利の引き下げは無いにしても、「0.1%」金利が下がるだけで総返済額は大きく変わってきます。例えば、3,000万円の住宅ローンを固定金利30年で組む場合、「0.1%」金利が下がるだけで、58万円も返済額を減らすことができます。1%下がればなんと562万円です。少しの金利差でこれだけ変わってきますので、0.1%でもばかにできません。
金利 | 毎月の支払額 | 支払総額 | お得になる金額 |
---|---|---|---|
3.0% | 12.6万円 | 4553万円 | |
2.9%(-0.1%) | 12.5万円 | 4495万円 | 58万円 |
2.5%(-0.5%) | 11.8万円 | 4267万円 | 286万円 |
2.0%(-1%) | 11万円 | 3991万円 | 562万円 |
5.早めに仮審査(事前審査)の申込みをしましょう!
住宅ローンの借り入れを検討中の場合は、早めに仮審査(事前審査)の申込みをしましょう!なぜ早めの申込みをおすすめるかというと、住宅ローンの金利は、融資が実行される時の金利が適用されるからです。一般的に、住宅ローンの審査から融資が実行されるまでは、2週間から1ヶ月ほどかかると言われていますが、マイナス金利の影響で住宅ローンの金利が下がり、申込みの数が増えたことで、審査の時間が1ヶ月半、2ヶ月伸びていると聞きます。

申込みが遅くなれば、そのぶん融資の実行も遅くなるので、様々な要因が重なって金利が上がってしまうことも十分にありえます。「早く申込んでおけばよかった…。」ということがないように、計画的に準備を進めていきましょう。
☆マイナス金利政策導入中は、住宅ローンを組む(借り換える)絶好のチャンスです!